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2026.07.07
AIに引用されているのに、なぜ推薦されないのか

私たちが「ゴーストサイテーション」を見る理由

自社のアクセス解析を見ても、そこには表れない損失があります。

たとえば、こういう状態です。AIに自社サイトの情報が使われている気配はある。けれど、いざ「おすすめは?」と聞くと、回答に並ぶのは競合の名前ばかり。自社は情報源として役立っているのに、選ばれるのは別の会社——。

この違和感は、なかなか正体が掴めません。なぜなら、この損失は自社のアクセス解析には一切表れないからです。AIの回答の中で起きていることなので、当事者からは見えない。気づいたときには、競合ばかりが推薦されている、という状態だけが残ります。

今日は、この見えにくい損失について書きます。

引用されることと、推薦されることは違う

まず押さえておきたいのは、AI回答における「引用されること」と「名前が挙がること」は、同じではないということです。

AIが回答をつくるとき、情報源として自社サイトを参照することがあります。これが「引用」です。一方で、「おすすめはどこか」と聞かれて名前を挙げるのが「推薦」です。

この二つは、近いようで、実務上は分けて見たほうがよい指標です。

私たちは、AIの扱いを3つの段階で見ています。まず候補に入るか(STAGE 01)。次に情報源として引用されるか(STAGE 02)。そして、おすすめとして推薦されるか(STAGE 03)です。

問題は、STAGE 02(引用される)まで届いているのに、STAGE 03(推薦される)に進めていないケースです。情報は使われているのに、名前は出てこない。引用と推薦のあいだで、止まってしまっている状態です。

これを「ゴーストサイテーション」と呼びます

引用はされているのに、推薦は競合に持っていかれる。この、いわば幽霊のように名前が消えてしまう現象を、私たちは「ゴーストサイテーション(幽霊引用)」と呼んで検出しています。

ひとつ、正直に補足しておきます。この現象は、私たちが発見したものではありません。海外ではすでに “ghost citation” として名前がつき、測定や研究が進んでいます。たとえばSemrush社が2026年に公表した調査(約4,000ドメインを分析)では、AIの引用のうち6割強が、引用されているにもかかわらずブランド名としては言及されていなかった、と報告されています。海外ではこうした測定が進む一方で、国内でこれを「引用」と「ブランド露出」の差分として診断する実務は、まだ広く定着してはいません。

なお、”ghost citation” という言葉は、文脈によって使われ方が異なります。AIが実在しない情報源を作り出す、いわゆる捏造された引用を指して使われることもあります。本記事で扱うのは、そちらではありません。実在する自社ページがきちんと引用されているのに、回答本文ではブランド名として表に出てこない——Semrushなどが用いる、AI検索・ブランド可視性の文脈での意味です。AIが情報源そのものを捏造するハルシネーションとは、別の問題として扱います。

なぜ、これが怖いのか

ゴーストサイテーションが厄介なのは、当事者が最も気づきにくい損失だからです。

通常のアクセス解析は、サイトに来た人の動きを記録します。けれど、この損失はAIの回答の中で起きています。ユーザーはAIの答えを見て競合へ流れていくので、そもそも自社サイトには来ません。だから、解析画面には何も残らない。

「なんとなく問い合わせが減った気がする」「競合の名前をよく聞くようになった」。そういう体感はあっても、数字として掴めない。原因が特定できないまま、機会だけが静かに失われていきます。

見えないからこそ、外から測らないと分からない。ここに、診断する意味があります。

国内でも、すでに起きています

これは海外だけの話ではありません。

国内のある調査(LANY社・2025年)では、ある大手美容クリニックの公式サイトが、GoogleのAI回答(AI Overviews)において、対象キーワード1,628個のうち857個、割合にして52.6%で引用元として参照されていました。ところが、AIの回答本文にそのブランド名が実際に登場したのは、わずか22件、1.35%にとどまっていたと報告されています。

情報源としては、半分以上のキーワードで頼りにされている。にもかかわらず、名前が回答本文に出るのは、ごくわずか。厳密に言えば、これは「推薦された数」ではなく、回答本文にブランド名が登場した数です。推薦そのものと完全に同じとは言えません。それでも、AIに情報源として使われていても、ブランドとして表に出ないケースがある——引用と、ブランド名が本文に出ること(ブランド露出)とのあいだに、大きなズレが生じうる。この事実を、はっきり示す事例です。

指標の定義や対象は調査によって異なるため、この数字をそのまま一般化はできません。ただ、「引用されているのに名前が出ない」という現象が、日本の、しかも身近な業種で実際に観測されている——この事実は、知っておく価値があると思います。

どうやって見つけるのか

ゴーストサイテーションは、「AIに出たか、出なかったか」という粗い見方では捉えられません。引用と推薦を、分けて見る必要があります。

とくに、引用元を明示してくれるタイプのAI(Perplexityなど)では、この差がはっきり見えます。回答の情報源に自社が挙がっているか。それなのに、本文では競合の名前ばかりが出ていないか。この二つを突き合わせると、「引用は取れているのに、本文では名前が出ていない」という構造が浮かび上がります。

ただし、AIサービスによって引用の示し方は異なります。Perplexityのように情報源が見えやすいものもあれば、GoogleのAI回答(AI Overviews)のように検索結果の中で確認するものもあります。同じ会社でも、あるAIでは名前が出て、別のAIでは引用だけで終わる、ということが起こります。だからこそ、ひとつのAIだけで判断せず、複数の環境を横断して見る必要があります。

私たちが多様な問いを横断して見るのも、ここに理由があります。ある問いでは引用も推薦も取れている。別の問いでは、引用だけで推薦は競合に流れている。問いごとに分けて見ることで、どの場面でゴーストが起きているのかが、地図のように見えてきます。

引用止まりを、推薦につなげるために

では、引用されているのに推薦されない状態は、どうすれば動くのか。

ここは記事一本で語りきれる話ではないので、方向だけお伝えします。ポイントは、「AIが推薦の理由を組み立てられるだけの材料が、きちんと存在しているか」です。引用されるのは、情報が正確で参照しやすいから。けれど推薦は、それに加えて「誰向けなのか」「何が比較優位なのか」「なぜこの会社を挙げるべきなのか」という理由を、AIが組み立てられて初めて成立します。

引用は取れているのに推薦されないなら、その「推薦の理由になる情報」が足りていない可能性がある。そこを診断で特定し、整えていく——それが、ゴーストサイテーションへの向き合い方だと考えています。

アクセス解析には映らない損失を、まず可視化すること。引用で終わっているのか、推薦まで届いているのか。そこを分けて捉えることが、AIに選ばれる構造をつくる出発点になります。

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